【偏頗弁済の恐怖】「恩人への優先返済」が犯罪に!倒産直前の絶対NG行動

「とうとう資金繰りが尽きた。せめて、世話になったあの会社と親族への借金だけは今日中に全額返そう」。

この経営者としての「最後の誠意」は、破産法において最もやってはいけない絶対NG行動です。

倒産(支払不能)が目前に迫った状態で、特定の相手だけに借金を返す行為を**「偏頗(へんぱ)弁済」**と呼びます。破産手続きの絶対ルールである「債権者平等の原則」に反するため、後日、裁判所が選任する「破産管財人」によってその返済は法的に取り消され(否認権)、恩人は受け取ったお金を強制的に没収されます。

ぬか喜びさせた上に、法的な泥沼に引きずり込むのです。 さらに、経営者自身も「詐欺破産罪」に問われる可能性があり、自らの借金の帳消し(免責)すら認められなくなる最悪の結末を迎えます。

この破滅を防ぐ超実務的な鉄則は以下の2点です。

①【「支払不能」を悟ったら1円も動かさない】:万策尽きて弁護士に相談すると決めた瞬間から、どれだけ泣きつかれても特定の相手への支払いを完全にストップする。

【「えこひいき」の絶対禁止】:親族や恩人であっても、銀行や他の取引先と全く同じ「債権者の1人」として冷徹に法的手続きに乗せる。

経営者の「個人的な義理」で法律は曲げられません。恩人に特別扱いをしないことこそが、倒産時における真の誠意なのです。

倒産直前の「絶対NG行動4選」

経営者がやりがちなNG行動破産法上の最悪のペナルティ絶対防衛ライン
① 偏頗(へんぱ)弁済
「恩のある取引先や親族からの借金だけは、全額返してあげたい」
【管財人による「否認(取り消し・没収)」】
特定の債権者だけを優遇する「債権者平等の原則」違反です。後から管財人が恩人の元へ行き、「不当に受け取った金を全額返せ」と強制没収します。恩人をぬか喜びさせた上に法的トラブルに巻き込みます。
【「1円」も動かさない(支払いストップ)】
倒産を決断し弁護士に依頼した瞬間(受任通知の発送)から、どんなに泣きつかれても、怒鳴られても、特定の相手への支払いは完全にストップし、すべてを弁護士に預けてください。
② 財産隠匿(名義変更)
「せめて妻や子供の生活を守るため、会社の現金や車を家族名義に移しておこう」
【「免責不許可」と「詐欺破産罪」】
管財人の調査能力を舐めてはいけません。直前の名義変更は100%バレます。悪質な財産隠しとみなされ、社長自身の借金がチャラにならない(免責不許可)ばかりか、最悪「詐欺破産罪」で逮捕されます。
【「裸」で法的手続きに乗る覚悟】
会社の資産も社長個人の資産(自宅など)も、すべて管財人に明け渡すのが破産のルールです。「自由財産」として手元に残せる現金(最大99万円)以外は、一切の小細工をせず、正直に申告してください。
③ 廉価処分(投げ売り)
「当面の現金を作るため、会社の在庫や機材をブローカーにタダ同然で売ってしまおう」
【不当な財産流出(否認の対象)】
本来、債権者に配当されるべき会社の資産価値を不当に下げる行為です。買い取った業者に対して管財人が「適正価格との差額を払え(または品物を返せ)」と訴訟を起こす事態になります。
【「勝手な現金化」の絶対禁止】
在庫や機材の売却は、適正な市場価格でなければなりません。倒産直前の焦った投げ売りは「債権者の利益を害する行為」になります。処分する前に必ず弁護士に相談し、適正な評価額の記録を残してください。
④ 詐欺的借入・買掛
「もう返せないと分かっているが、最後に銀行から限界まで借り、商品をツケで仕入れよう」
【「詐欺罪」での刑事告訴リスク】
支払う意思も能力もないのに、相手を騙して金や商品を引っ張る行為です。破産手続き以前の問題として、警察が動く「詐欺事件」に発展し、会社どころか経営者自身の人生が完全に終わります。
【「支払不能」を悟ったら即座に白旗を】
「あと100万円あれば今月を乗り切れる」という悪魔の囁きに負けてはいけません。返せないと分かった時点で、それ以上の被害を他社に広げない(直ちに営業を停止する)ことこそが、経営者の最後の責任です。