「従業員30名の壁」を越えると、経営者の悩みは「売上」から「人」へと激変します。
その筆頭が、うつ病等のメンタルヘルス不調による休職への対応です。
創業時にネットで拾った「コピペの就業規則」をそのまま使っているなら、御社は今、丸腰で地雷原を歩いています。
最も泥沼化するのは「休職期間満了による自動退職(実質的なクビ)」の瞬間です。
休職期限の直前、社員が主治医から「軽作業なら復職可能」という診断書をもらってきたとします。ペラペラの就業規則には「治癒した場合は復職させる」としか書かれていないため、会社が「元のハードな営業職ができないなら退職だ」と突き放すと、裁判所は「配置転換などの配慮を怠った不当解雇」として数千万円のバックペイ(未払い賃金)を命じます。
この悲劇を防ぐ防衛策は、就業規則の「休職・復職条項」を今すぐガチガチに書き換えることです。
①【「治癒」の定義の厳格化】
「原則として『休職前と同じ業務を、通常通り行える状態』に回復すること」と明記し、軽作業での復職要求をブロックします。
②【指定医の受診義務】
患者の希望通りに書かれやすい主治医の診断書だけでなく、「会社が指定する産業医や専門医の受診を命じることができ、復職可否はその意見を尊重して会社が決定する」と規定します。
就業規則は、労基署に出すための「お飾り」ではありません。
会社を不当解雇の訴訟リスクから守る「最後の防波堤」です。実態に合わないルールは、今日限りで見直してください。
「よりそいBizリーガル」です。
「主治医から『復職可能』の診断書が出たので、明日から出社します」。
休職中の社員から突然こう言われ、経営者が慌てて現場に戻してしまう。実はこれが、後々「不当解雇」や「安全配慮義務違反(症状の悪化)」で数千万円を失う最大の法的トラップです。
会社を泥沼の労務トラブルから守るための、超実務的な「休職から復職(または退職)までの鉄則フロー」を表にまとめました。
多額の訴訟を防ぐ!休職から復職判定までの「鉄壁の手続きフロー」
| 手続きのフェーズ | 会社が行うべき実務ステップ | 注意点と防衛策(地雷回避) |
| ① 休職の開始 (診断書の提出時) | ・社員から「診断書」と「休職願」を提出させる。 ・休職期間、給与の扱い(無給等)、社会保険料の徴収方法を書面で通知する。 | 【「口頭での休職」は絶対NG】 いつからいつまで休職するのか、期間満了時に復職できなければ「自然退職(自動的に退職)」となる旨を、必ず**書面(休職通知書)で交付し、証拠を残してください。 |
| ② 休職期間中 (療養専念義務) | ・月に1回程度、体調や生活状況の報告(メール等)を義務付ける。 ・会社からの連絡窓口を人事等に一本化する。 | 【休職中のSNSや副業の監視】 「うつ病で休職中なのに、頻繁にSNSで旅行の写真を上げている、他社で副業している」ことが多いです。就業規則で「療養に専念する義務」を明記し、違反時は懲戒対象にできるよう縛りをかけます。 |
| ③ 復職の申し出 (期限の1〜2ヶ月前) | ・社員から「復職願」と「主治医の診断書」を提出させる。 | 【主治医の診断書を絶対に鵜呑みにしない】 主治医は患者(社員)の味方であり、「とりあえず(軽作業なら)復職可能」と甘い診断書を書きがちです。これを信じてそのまま出社させ、再発・悪化した場合、会社の「安全配慮義務違反」となり多額の損害賠償を背負います。 |
| ④ 復職可否の「判定」 (★最大の法的勝負所) | ・会社が指定する産業医や専門医の面談を受診させる。 ・主治医の意見、産業医の意見、本人の状態を総合的に判断する。 | 【「治癒」の基準は『元の業務』ができるか】 本人が「軽作業ならできます」と言っても、会社には元のポジション以外の業務を用意する義務は原則ありません。**「休職前と同じ通常業務を、軽減措置なくこなせる状態(治癒)」でなければ、冷徹に「復職不可」の判断を下します。 |
| ⑤ 最終決定 (復職 or 退職) | 【復職可の場合】 復職通知書を交付し、必要に応じてリハビリ出勤(試し出勤)を実施。 【復職不可の場合】** 休職期間満了をもって「自然退職(または解雇)」とする通知書を交付。 | 【「クビ(解雇)」ではなく「自然退職」へ】 復職できない場合でも、「お前はクビだ」とは絶対に言わないでください。就業規則に則り、「期間満了により、〇月〇日付で自動的に退職となります」という**「自然退職」**の手続きをとるのが、訴訟リスクを最小化する実務の鉄則です。 |


