【癒着と不正の温床】「長年勤める信頼できる経理」こそ最も危ない

「真面目で絶対に休みを取らない古参の経理(または発注)担当者」。

多くの経営者が理想とするこの社員像こそ、実務上最も警戒する「不正のシグナル」です。

特定の社員が長年、金銭回りや発注業務を独占すると、業務は完全にブラックボックス化します。「休みを取らない」のではなく、「他人が自分の業務を見ると、帳簿の辻褄合わせ(横領)がバレるから休めない」というのがリアルな実態です。
また、購買担当者が同じだと、特定の業者と癒着し、会社に割高な請求を回して裏金(キックバック)を受け取る不正も極めて容易に発生します。

この破滅を防ぐ防衛策は、「属人化の強制排除」です。

①【ジョブローテーションの徹底】:経理や購買などのお金を扱うポジションは、最低でも3〜5年で必ず配置転換を行う。

【強制的な長期休暇の付与】:人員の余裕がなく配置転換が難しい中小企業でも、年に1回「連続1〜2週間の休暇」を強制的に取得させ、その間は別の社員に業務を完全代行させる(不正の多くは、この不在期間中のイレギュラー対応で発覚します)。

【抜き打ちの内部監査】:社長や外部専門家(税理士・顧問弁護士)が、予告なしに実際の預金残高と帳簿、発注単価の妥当性を突合する。

「人を信じても、仕組みは疑う」。
長年会社を支えてくれた功労者を「犯罪者」にしないための冷徹な牽制システム(内部統制)を作ることこそが、経営者の真の愛情なのです。

信頼が仇となる!ベテラン社員が手を染める「最悪の不正行為5選」

不正の類型・手口リアルな実態(どうやって会社から金を抜くか)経営者が見落とす「初期の異常サイン」防衛策・牽制
① 架空請求・口座振替
(経理担当者の横領)
自分が管理するダミー会社の口座や個人の別口座に対し、架空の外注費として毎月少しずつ送金する。帳簿上は「雑費」や「外注費」として処理し、完璧に辻褄を合わせる。【絶対に長期間休まない】
他人が帳簿やネットバンキングの履歴を見ると一発でバレるため、「私がやりますから」と頑なに有給(特に連休)を取らず、自分のPCを触られるのを極端に嫌がる。
【強制的な連続休暇と代行】
年に1回、必ず「連続1週間」の休暇を取らせ、その間は別の社員や外部(税理士等)に業務を代行させる。不正があれば、この「不在の1週間」で必ず綻びが出ます。
② キックバック・癒着
(発注・購買担当者の不正)
特定の業者と結託し、相場より10%〜20%高い金額で発注する。業者は会社の金で潤い、担当者はその見返りとして個人的に現金や接待(裏金)を受け取る。【相見積もりを異常に嫌がる】
「あの業者じゃないとウチの品質は保てない」「昔からの付き合いだから」と尤もらしい理由をつけ、他社との比較検討や業者の切り替えを猛烈に拒絶する。
【定期的な業者見直しと担当変更】
「発注担当者は3年で必ずローテーションする」「一定額以上の発注は、必ず新規業者を含めた3社の相見積もりを必須とする」というルールをシステム化する。
③ 商品・備品の横流し
(在庫管理・現場担当者の不正)
会社の在庫(商品、部品、金属スクラップ、PC等)を少しずつ盗み出し、メルカリやリサイクルショップ、専門業者に横流しして現金化する。【原因不明の「棚卸減耗」の常態化】
帳簿の数と実際の在庫数が合わない事態が頻発するが、常に「不良品として廃棄した」「数え間違いだ」と曖昧な理由で処理され、追求されない。
【「管理する人」と「数える人」の分離】
在庫を日々管理している人間と、月末に在庫を数える(棚卸しする)人間を絶対に分ける。第三者の目を入れることが最強の抑止力になります。
④ 架空経費・カラ出張
(営業エース・役員クラスの不正)
行ってもいない出張の交通費を請求する、私的な飲食代を「接待交際費」として落とす、切手や新幹線回数券を会社の経費で大量購入し、金券ショップで換金する。【「宛名なし」「品代」の領収書が多い】
「営業成績が良いから」という理由で、経理が彼らの経費精算をフリーパスで通している。特定の金券類や、高額な飲食代の請求が毎月上限ギリギリまで続く。
【法人カードの強制と現金精算の廃止】
立替精算を原則廃止し、会社名義の法人クレジットカードを持たせる。利用履歴(どこで何を買ったか)が会社に直接データで届くため、不正な換金やごまかしが不可能になります。
⑤ 顧客の横取り・競業
(ベテラン技術者・営業の不正)
会社に来た仕事の一部を、「ウチ(会社)を通すと高いから」と顧客に持ちかけ、自分自身が裏で立ち上げた別会社や、知人の会社に直接発注させて利益を抜く。【売上は落ちているのに羽振りが良い】
担当顧客の取引額が減っているにも関わらず、本人は全く焦る様子がなく、むしろ高級車に乗るなど生活レベルが上がっている。
【メール・ログの監視と競業避止義務】
会社のPCやメールから、私的なビジネスのやり取りをしていないか定期的にログを監査する。また、就業規則で「競業行為」を明確な懲戒解雇事由として定めておく。