【阿吽の呼吸が命取り】「いつもの感じで」が招くフリーランス新法違反と公取委のメス

「彼とは昔からの付き合いだから、契約書なんてなくてもツーカーの仲だ」。

経営者のその「古き良き商慣習」は、今やただの「優越的地位の濫用」です。特に2024年に施行された「フリーランス新法(フリーランス・事業者間取引適正化等法)」や、厳格化の一途をたどる下請法において、発注側の「甘え」は一切許されなくなりました。

「ちょっとこれ追加でお願い(無償)」「支払いは来々月でいいよね」といった口約束の横行。

外注先が愛想笑いで引き受けてくれていても、本音は分かりません。裏で公正取引委員会に匿名通報されれば終わりです。ある日突然、公取委の調査が入り、最悪の場合は社名が公表され、企業ブランドは「下請けいじめのブラック企業」として一瞬で崩壊します。

この致命傷を防ぐ防衛策は、「ツーカーの仲」を強制的にリセットすることです。

①【発注の完全書面化】:どんな少額・短期の発注でも、作業開始前に必ず「業務内容・報酬額・納期」を明記した発注書(メールやチャットでも可)を交付する。口頭発注は明確な法律違反です。

【「ついで作業(タダ働き)」の徹底排除】:仕様変更や追加作業が発生したら、必ず「追加見積もり」を出させる。やり直しを無償で強要することは最も重い違法行為の一つです。

【支払期日の絶対厳守】:納品・検査完了から「60日以内」の支払いをシステムで強制する。「ウチの資金繰りが厳しいから待ってくれ」は絶対に通用しません。

「親しき仲にも礼儀あり」ではなく、現代は「親しき仲にも『書面』あり」です。フリーランスを対等なビジネスパートナーとして法的に丁重に扱うことこそが、結果的に自社の首(信用)を守る最強のガバナンスなのです。

フリーランス・下請けへの違法発注5選と正しい対応

現場で横行する「無意識のNG行為」経営者・現場の甘い言い分適法対応(OK)
① 口頭発注・発注書の後回し
(書面交付義務違反)
「急ぎの案件だったから、とりあえず電話とLINEで『進めておいて』と頼んで、金額は後から決めようと思った」【作業開始前の「条件明記」を絶対ルール化】
金額や納期が未定のまま作業をさせるのは違法です。正式な契約書が間に合わなくても、「業務内容・報酬額・納期」の3点を明記したメールやチャットを、必ず「作業着手前」に送信し、証拠(ログ)を残します。
② 「ついで作業」のタダ働き強要
(不当な経済的利益の提供要請)
「ちょっと仕様が変わっただけだから、これくらい『ついで』に無料で修正してくれてもバチは当たらないだろう」【追加作業は「別発注(追加費用)」が鉄則】
当初の要件定義にない追加修正や作業を無償でやらせることは「優越的地位の濫用」です。追加が発生した瞬間に現場の作業を止め、必ず「追加見積もり」を出させ、合意してから再開させます。
③ 元請けの都合による「支払い遅延」
(支払遅延の禁止)
「ウチのクライアントからの入金が遅れているから、外注さんへの支払いも来々月まで待ってもらおう」【納品から「60日以内」の支払いをシステム強制】
自社の資金繰りや、元請けからの入金遅れは一切の言い訳になりません。成果物を受け取った日(または検査完了日)から「原則60日以内」に支払うよう、経理システム上で期日をロックします。
④ 理不尽な「受領拒否・返品」
(受領拒否・不当な返品の禁止)
「クライアントの都合でプロジェクト自体がポシャったから、作ってもらったデータは受け取れないし、お金も払えない」【発注側の都合によるキャンセルは「全額買取」】
外注先に責任がない(仕様通りに作っている)にもかかわらず、自社の都合で受け取りを拒否したり、代金を減額(買いたたき)したりすることは重度の違法行為です。不要になっても約束した代金は全額支払います。
⑤ やり直しの「無限ループ」
(不当なやり直しの禁止)
「なんかイメージと違うんだよね。ウチの社長が納得するまで、何度でも無料でリテイク(修正)してよ」【検収基準の明確化と「〇回まで」の制限】
曖昧な理由での無限リテイクは違法です。発注時に「検収基準(何をクリアすれば合格か)」を明確にし、契約上「無料修正は〇回まで、それ以降は別途費用」と上限を設けることで、双方の泥沼を防ぎます。