「会社は俺のもの」。
この感覚で、本社敷地や商標権を「社長個人の名義」にしたまま放置している中小企業は無数にあります。社長が元気なうちは問題ありません。
しかし、いざ後継者に会社を譲る、あるいはM&Aで売却しようとした瞬間、この「公私混同」が致命傷になります。「会社を買いたいが、工場が社長の個人持ちでは追い出されるリスクがあって買えない」「後継者が社長個人の土地を相続できず、会社が工場を失う」という事態に陥るのです。
慌てて名義を会社に移そうと「タダ同然」で譲渡すれば、税務署から「適正価格との差額を会社に贈与した(みなし贈与)」と判定され、会社に莫大な法人税が課せられます。この地雷を撤去する超実務的な鉄則は以下の2点です。
①【不動産鑑定士・税理士による「適正価格での買い取り」】:個人資産を会社に移すなら、絶対に「時価(適正価格)」で売買してください。専門家の鑑定書という客観的なエビデンスを盾にし、税務署からの「不当な利益供与」という指摘を完璧に封じ込めます。
②【厳格な「賃貸借契約」の巻き直しと適正家賃の支払い】:買い取る資金が会社にない場合は、社長個人と会社の間で「適正な相場家賃」での賃貸借契約書を正式に結び直します。「身内だからタダ(使用貸借)」という曖昧な関係を断ち切り、完全なビジネス上の取引へと昇華させます。
社長の財布と会社の財布は別物です。次世代へバトンを渡す前に、絡み合った「公私の資産」を冷徹な契約と数字で切り離すことこそが、経営者の最後の責任なのです。
「よりそいBizリーガル」です。
「俺の会社なんだから、俺の土地をタダ同然で会社に売って(貸して)何が悪い」。
社長、その「オーナー経営者特有のどんぶり勘定」こそが、税務署が最も好む獲物です。税務署は、個人と法人の間で「時価(適正価格)」から外れた取引を見つけた瞬間、その差額を**「みなし贈与(法人への受贈益)」**として認定し、会社に多額の法人税を容赦なく課してきます。
会社を後継者に譲る前、あるいはM&Aで売却する前に、必ず清算しなければならない「公私混同資産」を適正化し、税務署の刃から会社を守り抜く超実務的な4つの防衛線を表にまとめました。
「みなし贈与」と言わせない!公私混同資産の適正化ルール
| 公私混同の対象資産 | 経営者が陥る「どんぶり勘定」 | 適正化・防衛策 |
| ① 社長個人の「不動産」 を会社に売却する時 | 「会社の資金繰りが厳しいから、俺個人の土地を帳簿価格(簿価)や固定資産税評価額で、相場より安く会社に売ろう」 | 【「不動産鑑定士」による時価の完全証明】 著しく低い価額での譲渡(低額譲渡)は、時価との差額が会社への「受贈益(みなし贈与)」となり法人税がかかります。必ず不動産鑑定士に依頼し、「この価格が現在の適正な時価である」という鑑定評価書(最強のエビデンス)を取得してから売買契約を結びます。 |
| ② 社長個人の「土地」 を会社に貸している時 | 「昔から俺の土地に会社を建てさせているが、身内だから地代はタダ(使用貸借)でいい。契約書も作っていない」 | 【「無償返還の届出書」と適正地代の支払い】 権利金(借地権)の授受がないと、会社が借地権相当額の贈与を受けたとみなされ莫大な税金がかかります。税務署に**「土地の無償返還に関する届出書」を連名で提出し、借地権の認定課税を完全に封じ込める**と同時に、相場に合った「相当の地代」を毎月会社から社長へ支払う契約を巻き直します。 |
| ③ 社長個人の「特許・商標」 を会社に移管する時 | 「創業時に俺の個人名義で取った特許や商標を、会社名義にタダで名義変更(譲渡)しておこう」 | 【「弁理士」による評価と適正な売買・ライセンス】 価値のある知財を無償で会社に譲れば、これも受贈益になります。弁理士等の専門家に知財の価値(時価)を算定させ、その価格で会社が買い取るか、あるいは名義は個人のままにして、会社から社長個人へ「適正な実施料(ロイヤリティ)」を支払うライセンス契約を正式に結びます。 |
| ④ 会社から「社長個人」 への貸付金(役員貸付金) | 「社長の俺が、会社から少し生活費を前借りして何が悪い。利息なんて払うわけないだろう」 | 【「認定利息」の計上と金銭消費貸借契約書の作成】 会社のお金を無利息で社長に貸すと、税務署は「本来取るべき利息を社長に贈与した」とみなし、認定利息を計算して会社に課税します。必ず国税庁が定める適正な利率(特例基準割合等)で利息を設定した「金銭消費貸借契約書」を作成し、社長は毎月、元本と利息を会社に返済する実績(通帳の履歴)を残してください。 |


